2015年新年会、2月句会報

句会報の一部を紹介します。

雁ゆくやまだ見ぬ蒼き夜がくる
大森健司

春一番輪切りにこの身撮られけり
梶田紘子

だまし絵の町に雪降る二日かな
西川輝美

星屑となりて焚火の果てにけり
菅城昌三

それぞれの祈りのかたち桃の花
西尾ゆう子

ともかくも淋しき夜なり通い猫
森千花

しだれ梅傘に隠れし君捜す
前田壽登

雪とけてながるる水の影のなし
渡辺新次郎

啓蟄や痛みのリズム沈まれり
速水房男

うすらひに水足してゐる墓前かな
古田左千夫

泣き笑ひしてすぐ落ちる初化粧
中原恵美

雑煮椀ちちははの座を直しけり
高木憂

聴風館もみじに雪の音をきく
野村幸男

ささえあう雪の小径や去年今年
野村美穂子

卓上のコップの水に冬を見ゆ
余力端美

初夢のはずむ心に年重ね
荒木克彦


お涅槃や石のひとつに遊女墓
大森理恵

このところ俳句らしい俳句から脱却した1人が、梶田紘子である。
花鳥諷詠は否定しない。
しかし俳句はもっと人間の宇宙をも包む大きな器をもっている。
梶田紘子は最後の抗ガン剤を終え、無事に生き延びた。
そこには死と向き合う自然の葛藤の自己の投影が作品に為されている。

春一番輪切りにこの身撮られけり

これはMRIのことであるが、何より春一番の季語が良い。

他にも、
晩年にふと解ること春しぐれ
草萌ゆる逃げもせずゐる病ひあり
浅春やうなじの白き少女たち

がある。
中でも、
晩年にふと解ること春しぐれ
が良い。
これも季語の妙である。
春のしぐれは少しあたたかくすぐに止む。
だから句としての造形が説教じみた俳句らしい俳句になっていないのである。
俳句の善し悪しはほぼ季語で決まると言っても過言ではない。
ひとつひとつでよいので、季語を学んでいってほしい。


それぞれの祈りのかたち桃の花
西尾ゆう子

他にも、
星ひとつ地上に降りて冴え返る
うすらひや触れらるるほどとけてゆく
半袖のナースに小雪舞ひ初めし
菜の花や仏壇お位牌溶けし過去

が、ありどれも佳吟。

それぞれの祈りのかたち桃の花

なんと心に素直に入る一句であろう。
まるでつぶやきである。

また、
菜の花や仏壇お位牌溶けし過去
これも非常に面白い。

角川春樹氏の代表作に、
存在と時間とジンと晩夏光
があるが、
名詞の羅列はセンスがかなり問われる。

溶けし過去で締めくくることによってしっかりとした作品になっている。
僕の俳句が叫びであるとすれば、西尾ゆう子の俳句はつぶやきである。
本人が中村汀女が好きなように品位ある素直なつぶやきなのである。


また最近ぐんぐんと力を付けているのが、森千花。

ともかくも淋しき夜なり通い猫

他にも、
たとうれば桃のつぼみや春時雨
柚湯たつ山は真白の浄土なり
君待つは善か悪かと雪しきり
書かぬ文字迷ひ子のごと初日記

とすべて、ユーモアに溢れ骨格が出来てきている。

また、同じ句会の渡部新次郎、前田壽登の両氏も句の上達が素晴らしい。

あと、新人の余力端美、そして荒木克彦の両氏も俳句を楽しんで創作しているのが、伝わってきて嬉しい限りである。

大森理恵の、

お涅槃や石のひとつに遊女墓

やはり別格と言って良い。

彼女の過去の代表作に、
四月一日お仏壇が東京へお引越し
というものがあるが、季語の付け方、言葉の崩し方などは非常に巧みである。

他にも、
曼荼羅の赤々と寒もどりけり
靴音の後ろ寒夜の灯の蒼く

があり、噛み締めて勉強して頂きたい。

最後に僕の作品を少し並べて終わりにしたい。

雪の夜や名もなき駅の灯に降りる
新しい銀河に入りて年を越す
元朝の畳にいのち伸ばしけり
冬の蝶この世にぶらさがつてゐる
縄文のかけらの雪となりにけり
春雨やいろとりどりの祇園菓子
山笑ふ孤独な鼻がぶら下がる
蒲公英や時間の束の飛ばむとす
雁ゆくやまだ見ぬ蒼き夜がくる
 健司

大森健司
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kenjiomori

Author:kenjiomori
俳句結社「森」主宰、大森健司のブログ★受賞多数。
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