2017年1月句会報

句会報の一部を紹介します。

席題(狼、去年今年、鏡餅)

狼や贅肉(ぜいにく)のなき詩を愛す
大森健司
狼や奈落に星を拾ひたる
菅城昌三
遮断機の向かふより来る去年今年
西川輝美
舞妓らのうなじまぶしき五日かな
速水房男
虎落笛答えを出せと我身さす
森千花
大文字も比叡もそこに羽子日和
渡辺新次郎
去年今年父の遺影の白き髭
河本かおり
木枯しやうわさらしきの通り過ぐ
武田誠
マフラーの端を持つ掌の嬉しさよ
松浦美菜子
去年今年水に浮くもの沈むもの
山本孝史
煮凝りの夢は化石となりにけり
池上加奈子
鏡餅土間に静けさ過ぎにけり
白川智子
冬苺若きを摘んでしまひけり
前川千枝
冬菫まだ見つかってほしくない
臼田はるか
寒椿小さき嘘の重さかな
柴田春雷

狼や奈落に星を拾ひたる
菅城昌三
奈落とは仏教用語であるが、地獄を指す。
またどうしようもないさま、どん底を指す。
奈落は俳人が
時として使用する単語でもある。
上句は「森」中央支部での特選。
席題である狼であるが、今回の席題の中で最も創作しにくい席題であることは違いない。
昌三のこの作品は、まず広大な夜の闇の広がりの映像がはっきりとイメージ出来る。
また十七文字の中での陰と陽、マイナスとプラスのバランスも非常に良い。
星を拾う様、そこには希望があるのか、希望を待っているのか、虚構の希望なのかは不明である。
そこがまた昌三らしい。
もはや作者は俳句の骨。
つまり俳句の骨格を得ているように思われる。
絶滅のかの狼を連れ歩く 三橋敏雄
狼や贅肉のなき詩を愛す 大森健司

遮断機の向かふより来る去年今年
西川輝美
「森」中央支部での特選。
遮断機の向かふより来る、という措辞が非常に良い。
個人的には遮断機といえば、アニメーションの『秒速五センチメートル』のワンシーンが鮮烈である。
しかし、その感情を抜きにして客観視点で見ても秀でた作品。
去年今年の季語もさりげなく効いている。
輝美の俳句の良さは良い意味で「地に足がついていない」所に特徴があるように思われる。
本人が生き方を彷徨っている証拠かもしれない。
しかし、それがまた良さでもある。

大文字も比叡もそこに羽子日和
渡部新次郎
「森」洛中支部での特選。
まず、大文字も比叡もそこに、というダイナミックなスケールから羽子板をしているというみにスケールの比重の移ろいが面白い。
大文字も比叡もそこに見えて羽子板をする場所といえば京都御所、出町柳辺りであろうか。
作者ならではの京都らしい風土性も顕著に出ている。
非常に親しみのある作品でもある。
作者は「見たものしかまだ詠めない」と語っているが、それで良い。
花鳥諷詠とは本来は、大きな意味での写生であり、ただの自然詠ではない。
作者独特の視点がそこにあれば、それは大きく存在するのである。
豆腐売り小路を曲がるしぐれかな (2016.12)
滴りて方丈石の語りだす (2016.6)
書を置けば比叡の山は寒の雨 (2015.12)
もののふや鍵屋の辻の初しぐれ (2013.11)

木枯しやうわさらしきの通り過ぐ
武田誠
「森」祇園支部での特選。
うわさらしきの通り過ぐ、という措辞が良い。
また木枯しの季語も非常に効いている。
これが春風になってしまうとかなり甘くなる。
喧騒の中にいる孤独、もしくは独り身の寂しさを感じさせる一句。
都会的な叙情句でもある。
誰かのいない孤独を感じる若者が多いが、作者はむしろ誰かいることの孤独の辛さを詠んでいる。
評価すべき作品。

冬菫まだ見つかってほしくない
臼田はるか
「森」祇園支部での特選。
これは現代仮名遣いの口語俳句に当たる。
実に女性らしい作品。
自分の存在自体を隠したいのか、ほのかな恋心なのかは分からないが、後者であるような気がする。
冬菫(すみれ)の季語が実に慎ましく可憐で愛おしい。
現代女性に失われがちな美学である。
やはり男性はこういった女性に惹かれるものである。
口語でありながらも、古風な一面を持った魅力ある豊かな作品である。

俳句は何度も言うように、全世界から一瞬を切り取る作業である。
そこには感受性、知性、品性、生き方、宇宙観、哲学等すべてが必要になってくる。
近年、若手作家としてメディアに出ている作品をみても、目はひくがすぐに飽きる。
それは人間性の脆弱(ぜいじゃく)さにある。
俳句とは文芸とは文化とは、入り口は浅く奥は限りなく深い。
僕は日々を自由に楽しく生きている。
いまの若者にももっと自由でいいんだよ、自分を大切にするんだよ、ということを伝えていきたい。


大森健司

現在は企業のセミナーやコンサルティングも行なっております。
言葉の力というものは不可欠であり、非常に重要です。
いかにして短い言葉で人にインパクトを残すことが出来るか、ということです。それは仕事で最も大切な事であると感じます。又川柳や短歌にはない俳句独特の「季語」を勉強することによって言語の引出しは確実に増えていきます。人として大切な感受性も高めることが出来ます。自然とそうなります。
また句会とともに進めてまいります。
句会の参加、セミナー等、詳しくはまたホームページをご覧のうえ、お気軽にお問い合わせください。

「森」MORI
http://morihaikunokai.jp
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kenjiomori

Author:kenjiomori
俳句結社「森」主宰、大森健司のブログ★受賞多数。
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お問い合わせは「森」ホームページ にて。

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