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2018年新年句会・新年会報告

句会報の一部を紹介します。

兼題 : 淑気(しゅくき)、初写真、人日(じんじつ)

背の骨や淑気のなかを水はしる
大森健司
初夢の人であること忘じをり
菅城昌三
この生も輪廻の途中粥柱(かゆばしら)
西川輝美
夕波や音なく過ぐる去年今年
速水房男
傘の内われの世界の淑気かな
河本かおり
背ナに荷を抱へてきたり去年今年
武田誠
碧い目の家族増えるや初写真
松浦美菜子
人日の幾度もタイを直すかな
山本孝史
亡き母の着物纏いて初写真
池上加奈子
寝てよりの千両の雪払ひたる
白川智子
寂しさ来苗字変わりし賀状かな
前川千枝
人日や毛先を少しカールして
臼田はるか
冬の雲過ぎゆき枕高くせり
中谷翔
赤んぼの掌(てのひら)初日掬いをり
上田苑江
なずな摘む未熟な我を恥じながら
栗山千教
啜り込む蕎麦の香や春隣

美酒(うまさけ)にはや骨染めて去年今年
三谷しのぶ
出会い期し人日までのもちを食べ
村田晃嗣
元日の仄(ほの)かな匂い顔洗う
石田穂實
抜き襟のうなじの白き淑気かな
柴田春雷

赤んぼの掌(てのひら)初日掬いをり
上田苑江
「森」中央支部秀逸。
赤んぼとは、生まれて間もない子供。
または比喩的に、幼稚、世間知らずの人のさまにもいう。ー広辞苑【赤ん坊】ー
自らの出産と、その子供が成人して出産する様を見届ける眼とでは視点が当然違ってきて、この作品は後者かと思われる。
いわゆる俯瞰の句。
だからこそ想像が膨らむ。
混沌とした日本を取り巻く環境下で、未来への不安は広がるばかりである。
生まれたての赤子の無垢な眼に初日はどのようにうつっているのだろうか。
二世代前の人間から見た若者の幼稚さは憂いしかないかもしれないが、わずかな希望を初日に見出そうとしているのは誰なのか、陰と陽を絶妙に織り交ぜ、ともすれば立ち位置までもを見失いそうになりそうな、魅力的な作品である。
文学、藝術において、勿論俳句において正解はない。
後は詠み手の解釈に委ねる。

なずな摘む未熟な我を恥じながら
栗山千教
「森」中央支部秀逸。
春の七草とは、正月七日に摘み採って七草粥に入れる若菜。
芹(せり)薺(なずな)御形(ごぎょう)蘩蔞(はこべら)仏座(ほとけのざ)菘(すずな)蘿蔔(すずしろ)の七種。ー広辞苑よりー
近年七草を摘み揃えるのは困難であり、スーパーで山積みされたパック売りのセットを買うという、なんとも情緒の無い人日を迎えるのが、当たり前のようになってきた。
この句の出句により、正月七日に七種の新菜を奉った宮中行事の、無病息災という本来の意義をはたと気付かされ、まさしく淑気に通じる思いである。
なずなの開花時期は一般的に松の内を過ぎた頃であり、当然食卓に並ぶなずなには花は見受けられない。
鑑賞されることなく、正月休み食べ過ぎた、胃腸を労わる為に、無造作に摘み取られてゆく若菜に対して、未熟な我と謙遜しつつもまた、食す作者の手法は見事と言えよう。

啜り込む蕎麦の香や春隣

「森」名古屋支部特選。
蕎麦の香りはよくほのかと表現されるが、実際言葉に表すのは難しい。
蕎麦の香りを楽しむ食べ方は啜るのである。
これが昨今のミシュランブームで物議を醸し出したのだが、ワインを口に含む時と同じ様に、空気に触れさせることで香りが立つからである。
蕎麦を詠んだ歌人は多く、また文豪と言われた作家には蕎麦好きが多い。
季語の「春隣」がしっかりと恩寵をなしており、作品が平明で素朴なのがこの良さである。

美酒(うまさけ)にはや骨染めて去年今年
安部淑子
「森」名古屋支部特選。
美酒(うまざけ)とは万葉時代よく用いられた枕詞である。
作者を酔わすのは日本酒であると、「はや骨染めて」から想像される。
これがシャンパンやワインでは「はや骨染めて」が活きてこない。
ほろ酔いで頬にほんのり赤みが刺すのは実に色っぽい光景であり、見えるはずのない骨に転換したのは流石のひと言に尽きる。王翰の涼州詩の始めを挙げる。
葡萄美酒 夜光杯
美酒とは勝利の酒、即ち戦をくぐり抜けた男の特権である。その男性的視点を取り入れつつ、女性の魅力を存分にこの作品は昇華されている。
季語の「去年今年」も決してその邪魔をしていない。
今月の新年句会の中で最も感銘を受けた作品。

出会い期し人日までの餅を食べ
村田晃嗣
「森」中央支部秀逸。
山本健吉氏の言葉を用いると、「俳句は挨拶なり、即興なり、滑稽なり」。
この作者の作品はその全てを兼ね備えている。
その意味でも兼題の「人日」の中で最も優れた作品であると言える。
五節句のうち、人日は挨拶の日であり、重要な意味を持つ日だからこそ、この句が光る。
又、「出会い期し」の「期し」が「来し」ではないことにも、作者の冷静で細やかな視点が、作品を 一期一会 にまで転換させている。
人々が気合い十分、むしろ空回りの中、飄々と一人餅を食す作者の滑稽さ、ユーモアがこの句には溢れ、「出会い期し」によって可笑しくも明るく転換されている。この句は「出会い期し」で、文法として一旦切れている。
挨拶句として、全ての作品を凌ぐ作品であるが、奇しくも句会で採ったのは私ひとりであった。
この句を何度も舌で転がして味わって頂きたい。

元日の仄かな匂い顔洗う
石田穂實
「森」名古屋支部特選。
今年度より「森」俳句会に入会された元柳人。
いきなりの特選には驚かされた。
自然に囲まれ花を愛すると見受けられる句が多い。
穏やかな日常であっても忘れない鋭い観察力から生まれたこの作品には、素晴らしい感動が表現されている。
今年の冬は多くの雪に見舞われ特に寒かった。
作者が顔を洗った水はさぞ冷たかったに違いない。身の引き締まる思いだっただろう。
ここにも、淑気が感じられる。
その中で「仄かな匂い」の水で、日常的行為である「顔洗う」という行為が特別に感じられて、非常に良い。
その成功の鍵は季語である「元日」にある。
元日や手を洗ひをる夕ごころ 芥川龍之介
同時作として、
真夜中の枕が聞いた冬の雨
があり、こちらも秀吟。
これからに期待したいひとりである。

抜き襟のうなじの白き淑気かな
柴田春雷
「森」祇園支部特選。
ファッションの流行は時として疑問を投げかけたくなるもので、昨年は女性の間で抜き襟のシャツが大流行した。
正直、肌をさらし過ぎて色気の解釈を間違えている方が多いのではないかと思うのだが、抜き襟とは抜き衣紋、つまりは着物の襟が髷(まげ)の鬢付け(びんづけ)油で汚れない様に、襟を後ろに少し引いた着付けの仕方である。
そこに白粉を塗る舞妓の姿は可憐であり、大人になる前特有の、成熟しきっていない色気を感じる。
そこには凛とした女性本来の奥ゆかしい姿が存在する。
洗練された、兼題の「淑気」を用いた秀吟である。

無事に「森俳句会」新年句会及び新年会を開催することが出来たのもひとえに皆様のお陰である。
益々の句会の充実には感無量である。
今回はベテラン勢よりも中堅や新人の方の作品が優れていた。
勿論、俳句は生き方そのものなのでバイオリズムがある。
良くないときは良くない作品を出すべきなのである。句座にその時、その瞬間の自分を曝け出すことに意義がある。
そして何より、継続が大切となる。
今年も私自身、更に努力を務め、句座が刺激となり、安堵となるよう邁進していく所存である。
皆の日々が観察と感動の繰り返しとなるように、少しでもこの森俳句会が力になれば幸いである。
参考までに私、大森健司の新年俳句作品を幾つか列挙する。
背の骨や淑気のなかを水はしる
精髄に筆おろしゐる淑気かな
白絹のつめたさ纏(まと)ふ淑気かな
ひとの日やひとの貌見て寸評す
空に未だにほふものなし初写真
ゆったりと寒水ながる身の内外(うちと)
血の音のしづまるをまつ手套(てとう)かな

俳句は思いだけではいけない。
十七文字に詰め込みすぎると焦点がぼやけてくる。
それを如何に客観視して相手に知らせるか、否か。
詠み手に如何に想像させるか、写生をすることで気持ちを昇華させるのである。

「森」俳句会は近日、会員も増え、さらに充実した句会となっている。
近い将来「森」東京支部を開設する予定である。

俳句は言葉足らずでも、饒舌すぎてもいけない。
これは各企業のセミナーでも話していることであるが、99の流れる言葉より、「1の核心」を突いたひと言の方が、相手の心に残る。
話が上手ではない経営者の方々、不得手な経営者の方々もいらっしゃるが、ポイントはたったひとつでいい。
相手の心に突き刺さる言葉があればいいのである。
それは決して多く饒舌ではいけない。
あとはそのひとつの言葉を引き立てるある意味、陰や褻の言葉で良いのである。
多くを語る者は多くを失う。
それは詩歌のすべて。
又、俳句の世界でも同じである。

追記
現在は企業のセミナーやコンサルティングもいくつか行なっております。
言葉の力というものは不可欠であり、非常に重要です。
いかにして短い言葉でインパクトを残すことが出来るか、ということです。尚、川柳や短歌にはない「季語」を勉強することによって言葉の
引出しは確実に堅実に増えます。感受性も高めます。
また「森」句会とともに進めてまいります。
詳しくはまたホームページをご覧のうえ、お問い合わせください。

「森」MORI
http://morihaikunokai.jp
大森健司
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プロフィール

kenjiomori

Author:kenjiomori
俳句結社「森」主宰、大森健司のブログ★受賞多数。
お気軽に覗いて下さい。
お問い合わせは「森」ホームページ にて。

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