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2018年5月句会報

句会報の一部を紹介します。

兼題 : 陽炎(かげろふ)、虹、リラ

竹の子やをとこは月を彷徨す
大森健司
相席やお日柄もよくかぎろへり
菅城昌三
かげろふや何かを捨ててひとつ得る
西川輝美
山吹の袈裟通り過ぐ遊糸かな
速水房男
陽炎や過去から母が追ってくる
河本かおり
初夏のがらりと変はるリトマス紙
武田誠
椅子ふたつこころに架かる虹の橋
松浦美菜子
リラ冷えや女の胸に翳(かげ)りあり
山本孝史
短夜の夜明けに満たぬ心かな
池上加奈子
雲幾つ山は静かに陽炎へり
白川智子
虹の輪の消えゆるまでに髪を断つ
前川千枝
リラ咲くやふり返るには遠き丘
臼田はるか
酔ひさめて夜のガードのかぎろへり
中谷かける
リラ冷えや鏡の部屋に荷をほどき
上田苑江
聖五月我に囁く女あり

この声も融かしてダリの夏時計
三谷しのぶ
坂道やリラの咲く頃またひとり
柴田春雷

山吹の袈裟通り過ぐ遊糸かな
速水房男
「森」中央支部特選。
ここでいう「遊糸」とは兼題である「陽炎」の意。
「山吹の袈裟通り過ぐ」という措辞が幻想の世界でもあり、虚構の世界でもあり、ありありとした現実の世界でもあり、大変魅力的。
まるで泉鏡花の幽玄の世界観である。
これを見て真っ先に思い浮かぶのが次の一句。
炎天より僧ひとり乗り岐阜羽島 森澄雄
速水房男のここ数ヶ月の特選作品は彼自身の代表作品として並ぶ程に素晴らしい。
早く処女の句集出版を期待するひとり。

酔ひさめて夜のガードのかぎろへり
中谷かける
「森」祇園支部秀逸。
酔いがさめても、さめない目の前の現実社会という二重構造が面白い。
酔いたくても酔えないのかもしれない。
悪夢が続いているようでもある。
一見静かなようで、焦燥感や不安感が詠み手に迫ってくる、動きのある作品。
俯瞰とは違った、傍観者の目にうつる虚構の世界が季語の「陽炎」にある。

虹の輪の消えゆるまでに髪を断つ
前川千枝
「森」祇園支部秀逸。
淡い光を帯びた虹の輪の柔らかさと、髪を断つ固きもの、その間に揺らぐ作者の立ち位置が絶妙である。
消えゆるまでのという、コントラストのはっきりしない刹那的な中に浸っていたいけれども、もうそこにはいられない女性ならではの立ち位置での目線が新鮮に思えたのである。

リラ冷えや鏡の部屋に荷をほどき
上田苑江
「森」中央支部特選。
この句は、何気ない旅行終りの様を非常に明確に鮮明に捉えている。
季語の「リラ冷え」と「鏡の部屋に荷をほどき」という情景の措辞がこの上なく良い。
私大森健司の好きな作品のひとつに江戸川乱歩の『鏡地獄』という短編がある。
まず、それを思い出した。
そして鏡の寒々しい景色を絶妙に転換させる「リラ冷え」の季語。
作者は、確実に人間力を俳句の力に転換してきている。

坂道やリラの咲く頃またひとり
柴田春雷
「森」祇園支部特選。
これは非常にリズムの心地よい作品。
また、「坂道や」が何かと楽ではない状況を想像させるが、季語の「リラの咲く頃」によって不思議と救いをもたらす作品でもある。
アニメのひとコマのようでもある。
大人になると道は複雑になり、一度背負った荷を簡単におろすことはなかなか出来ない。
また「ひとり」とある作者の心は決して暗くない。
むしろ、少し軽くなっているようである。
つまり作者の姿勢は否定ではなく肯定であり、初夏によりそう軽やかでしなやかな句と言える。


十七文字に詰め込みすぎると焦点がぼやけてくる。
それを如何に客観視して相手に知らせるか、否か。
詠み手に如何に想像させるか、写生をすることで気持ちを昇華させるのである。

「森」俳句会は近日、会員も増え、さらに充実した句会となっている。
近い将来「森」東京支部を開設する予定である。

俳句は言葉足らずでも、饒舌すぎてもいけない。
これは各企業のセミナーでも話していることであるが、99の流れる言葉より、「1の核心」を突いたひと言の方が、相手の心に残る。
話が上手ではない経営者の方々、不得手な経営者の方々もいらっしゃるが、ポイントはたったひとつでいい。
相手の心に突き刺さる言葉があればいいのである。
それは決して多く饒舌ではいけない。
あとはそのひとつの言葉を引き立てるある意味、陰や褻の言葉で良いのである。
多くを語る者は多くを失う。
それは詩歌のすべて。
又、俳句の世界でも同じである。


追記
現在は企業のセミナーやコンサルティングもいくつか行なっております。
言葉の力というものは不可欠であり、非常に重要です。
いかにして短い言葉でインパクトを残すことが出来るか、ということです。尚、川柳や短歌にはない「季語」を勉強することによって言葉の
引出しは確実に堅実に増えます。感受性も高めます。
また「森」句会とともに進めてまいります。
詳しくはまたホームページをご覧のうえ、お問い合わせください。

「森」MORI
http://morihaikunokai.jp
大森健司
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プロフィール

kenjiomori

Author:kenjiomori
俳句結社「森」主宰、大森健司のブログ★受賞多数。
お気軽に覗いて下さい。
お問い合わせは「森」ホームページ にて。

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