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京都市国際交流センター 講演「俳句を楽しむ」第2回

俳句を楽しむー京都の四季と俳句ー
京都市国際文化協会からのお声掛けで開催しました。
第2回は、二十四節気の中でもとりわけ、【白露】から【寒露】までの二十四節気の移り変りを、例句を用いながら解説させていただきました。
異常気象で秋の心地よい日が一瞬しかない昨今なだけに、季語を知ることで、秋の入り口を早朝に感じたり、秋晴れの澄んだ空の美しさを改めて感動するなど、短いSPANで刻々と移り変わる【京都の秋】に関心を寄せていただけたらと思います。
俳句を作句する上で一番混乱しがちなのが旧仮名遣いと現仮名遣い、そして文語と口語の組み合わせです。
分かりやすく例句を用いてその組み合わせを説明させていただきました。
俳句に於いて最も真理眼が問われるのが【選句】です。
前期で、
①映像の復元②リズムの良さ③自己投影
の3点と講義しまして、軽くおさらいをした後、ご参加の皆様の実作品を各自選句していただいたのですが、驚くべき吸収力と言いましょうか、誰もが良い作句と選句をされたのには大変感激しました。
実りの秋、皆様の心が豊かでありますこと、心より祈願致します。

2018年9月23日 京都市国際交流センターKICA
俳句を楽しむー京都の四季と俳句ー 大森健司
にて
(以下 添削含む)
◉天賞
奔流を泰然として月がゆく わこ
◉地賞
いざよひや一人息子の便りなし ひろこ
◉人賞
坪庭に静かな雨や秋立ちぬ 初衣
佳作
満月や今宵は雲を友として
月あかり無灯の帰路も心地よし
澄む風に心吸はれて案山子です
虫の音に心おどらす若さかな
秋高し犬に連れられ人集ふ



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2018年9月句会報

句会報告一部を紹介します。

兼題 : 月全般、かなかな(蜩)、吾亦紅

ゆうだちや女羽衣脱ぎ棄てぬ
大森健司
秋の蚊に背中刺されて引越しぬ
菅城昌三
吾亦紅一方通行かもしれず
西川輝美
名の月に車椅子押し帰りけり
速水房男
夜泣き子と行きつ戻りつ月の道
河本かおり
長生きを零(こぼ)し過ぎゆく母の夏
上田苑江
薄くなるこころに秋の風が吹く
武田誠
吾亦紅言ひたきことは穂のなかに
松浦美菜子
煌々と名月青き今宵なり
山本孝史
満月に窓の硝子をきよめたる
池上加奈子
名月や小さきわが家待つてをり
白川智子
しなやかに無月のすすきそよぎけり
前川千枝
満月や無慈悲な夜が待っている
臼田はるか
名月の静かな海の底にいる
中谷かける
放たれし精子烟(けぶ)りて銀河かな
三谷しのぶ
名月や湯の香にかすむ山の奥
村田晃嗣
寂しさやくらげ飲み屋の戸をたたく
柴田春雷

秋の蚊に背中刺されて引越しぬ
菅城昌三
「森」中央支部特選。
この作品には、川柳にある「穿ち(うがち)」、ユーモア、そして滑稽が溢れている。
また昌三の大きく丸まった背中を知っている私にとっては非常に愉快さが増す作品である。
秋の蚊は、夏を超えてその姿は弱々しいが、子孫繁栄の為の執念は凄まじい。
作者は大きななりで及び腰なのである。
その秋の蚊に背中、つまり届かない部位を刺されて引っ越すという行為そのものが非常に面白味のある作品。
因みに参考までに、椎名誠の「蚊」という短編小説があるが、この男性は6畳一間で命をかけて蚊と格闘するという話であるが、昌三は全く逆の創り方をしているように感じる。

名の月に車椅子押し帰りけり
速水房男
「森」中央支部秀逸。
「名の月」とは勿論、名月の別名。
月の人のひとりとならむ車椅子 角川源義
源義先生の番頭で右腕でもあった吉田鴻司氏と句座を囲んでいた作者がこの名句を知らない筈はない。
作者が押していた車椅子は亡き父かもしれない。
現実的に考えると介護の仕事をしている患者かもしれない。
しかし名月に照らされて車椅子を押す、という映像の復元はやはり美しい。
決して辛い状況ではなく、ロマンティックで美しい映像である。

長生きを零し過ぎゆく母の夏
上田苑江
「森」中央支部特選。
零しているのは母なのか、自身なのかはわからないが、母となり、子育てを経て、自身の生き方をしっかり見つめているしなやかな女性らしさが実に心地の良い作品。
ギラついた夏の陽射しが「長生きを零し過ぎゆく」という措辞に対して、少しの寂寥感も持たせている。
一見静かに季節が過ぎゆくようでありながら、とても力強い作品。
文句なしの特選であった。

吾亦紅言ひたきことは穂のなかに
松浦美菜子
「森」祇園支部秀逸。
吾亦紅のイメージを良く捉えた作品。
言わぬが花という言葉があり、女性らしい視点と言える。
思ったことをすぐに口に出すと、時として人を傷つけたり、場の空気を悪くすることがある。
自身の中でよく熟成し、発する言葉には重みがある。
是非この感覚を俳句の境地に活かし続けていただきたい。

放たれし精子烟りて銀河かな
三谷しのぶ
「森」祇園支部特選。
この作品の映像の復元は、海外の抽象画に置き換えてした方が良い。
成功は精子が「烟る(けぶる)」というところにある。
作者のダイナミックかつ大胆な、そして生々しくも美しい世界観がそこに存在する。
これは、私 大森健司のこの作品への相聞歌とも言える。
母胎よりあまたの星の流れけり 大森健司
作者はこの作品をギリシャ神話をモチーフとした画家クリムトの「ダナエ」ようであると表現している。
女性は何故か、クリムト好きな人が多い。
「ダナエ」を未見の方は是非観て頂きたい。
受胎は女性にとって喜びであり、絵画の中の女性の顔は幸せに満ち溢れている。
またこの絵の中での、両足から流れる黄金の雨はゼウスの象徴なのである。
この「放たれし精子烟りて銀河かな」も又同じ世界観である。
性別を超越して宇宙世界、精神世界へと迷い込んでいく作品であることは確か、である。

名月や湯の香にかすむ山の奥
村田晃嗣
「森」中央支部特選。
この作品は一言で言ってしまえば、解することをもちいない。
遠近法を用いた奥行きのある作品。
山の上に昇る名月と、名月のさらに奥にある山とでは俄然後者の方が雄大な自然を感じられ、作者の視野の広さが現れた自己投影と言える。
誰でも素直に鑑賞される作品。
「名月」の季語の重さがどっしりと姿を構えている。
また「湯の香にかすむ」という措辞も何気ないようで逆に効いている。
これによって、煌々と光る月の美しさが際立ち、コントラストが良い。
これは世界各地を巡る作者の日本のとある地方での挨拶句であると思われる。
なんとも風情、情緒があって良いではないか。
言葉は平明で、思いは深く を芯に捉えている作品と言える。

寂しさやくらげ飲み屋の戸をたたく
柴田春雷
「森」祇園支部特選。
飲みに行くのは癖のもので、一度出だすとまた次の日も行きたくなるのが人間の性(さが)である。
つい足がそちらを向くというのは最近の草食系と言われるタイプとは違う人種なのであろう。
「くらげ」という軟体動物が硬き扉を叩くと述べる行為そのものに滑稽味がある。
一種のユーモアと寂寥感を帯びた作品。
埋まらない寂しさを転換した例句にない新たな視点の作品である。

十七文字に詰め込みすぎると焦点がぼやけてくる。
それを如何に客観視して相手に知らせるか、否か。
詠み手に如何に想像させるか、写生をすることで気持ちを昇華させるのである。

「森」俳句会は近日、会員も増え、さらに充実した句会となっている。
近い将来「森」東京支部を開設する予定である。

俳句は言葉足らずでも、饒舌すぎてもいけない。
これは各企業のセミナーでも話していることであるが、99の流れる言葉より、「1の核心」を突いたひと言の方が、相手の心に残る。
話が上手ではない経営者の方々、不得手な経営者の方々もいらっしゃるが、ポイントはたったひとつでいい。
相手の心に突き刺さる言葉があればいいのである。
それは決して多く饒舌ではいけない。
あとはそのひとつの言葉を引き立てるある意味、陰や褻の言葉で良いのである。
多くを語る者は多くを失う。
それは詩歌のすべて。
又、俳句の世界でも同じである。


追記
現在は企業のセミナーやコンサルティングもいくつか行なっております。
言葉の力というものは不可欠であり、非常に重要です。
いかにして短い言葉でインパクトを残すことが出来るか、ということです。尚、川柳や短歌にはない「季語」を勉強することによって言葉の
引出しは確実に堅実に増えます。感受性も高めます。
また「森」句会とともに進めてまいります。

詳しくはまたホームページをご覧のうえ、お問い合わせください。
「森」MORI
http://morihaikunokai.jp
大森健司

京都市国際交流センター 講演「俳句を楽しむ」 第1回

京都市国際文化協会からの依頼で前期、後期2回にわたり、講演を行いました。
受講生の皆様に俳句を実作していただくことで、日本の四季の移り変わりを肌で感じ、その感動を十七文字で表現する楽しさを知ってもらえたらという思いで、初回は【月】にテーマを絞りました。
俳句の歴史、俳諧の成り立ち、二十四節、俳句における「切れ」。
日本語の繊細さと、文法【てにをは】の使い方の理解が深まった良い機会になったのではと思います。
京都市国際文化協会の理事長は、我が母校の偉大な師であられます 村田晃嗣先生です。
理事長は国際政治学者の権威、とりわけアメリカ外交に精通されているイメージですが、日本の美を愛し、最も美しい日本語を話される方でいらっしゃいます。
素直な心で、言葉は平明に、そして「切れ」。
つまり言い切りの文芸俳句は感動を伝えるツールとして、面白いと興味を持っていただけると幸いです。

2018年9月17日 京都市国際交流センターKICA
俳句を楽しむー京都の四季と俳句ー 大森健司
にて
(以下 添削含む)
◉天賞
人の目が満月の頬食べてゆく 喜久子
◉地賞
名月のあそこに出でよ東山 成り
◉人賞
我が影のあざやかなりや今日の月 初衣
家路行く足音のする良夜かな 菜々子




プロフィール

kenjiomori

Author:kenjiomori
俳句結社「森」主宰、大森健司のブログ★受賞多数。
お気軽に覗いて下さい。
お問い合わせは「森」ホームページ にて。

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