2017年7月句会報

句会報の一部を紹介します。

兼題 : 巴里祭(パリー祭)、打水

人波や人を金魚の横切りぬ
大森健司
巴里祭の夜に金星を見失ふ
菅城昌三
裏窓に唄ごゑありて巴里祭
西川輝美
水打つて黒いドレスの通り過ぐ
速水房男
打水を浴びて始まる恋のあり
河本かおり
週末の花火に濡れてかえりけり
武田誠
花火見る大きな指に抱かれて
松浦美菜子
夕立きて心も傘も折りたたむ
山本孝史
遠青嶺道は真っ直ぐありにけり
池上加奈子
戸惑いしうなじの汗を拭いたり
白川智子
蝉時雨両手に掬ふ朝の水
前川千枝
影にきて影に消えたる庭の蝶
臼田はるか
ところてん女に裏と表あり
中谷翔
鋼鉄の貴婦人も居り夏の空

海いろを目にとどめをり祭鱧(まつりはも)
上田苑江
でで虫や描かれなかったクロニクル
柴田春雷

巴里祭ふと金星を見失ふ
菅城昌三
「森」中央支部特選。
巴里祭とは、1989年、パリ市民がバスティーユ牢獄を解放して打倒する火蓋を切った7月14日。この日はフランスの祝祭日となり、一晩中、飲み、歌い、踊りあかす。
巴里祭の名前の由来はフランス映画「ル・カトルズ・ジェイエ」より。
作者は巴里祭の騒ぎの高揚によって、金星を見失ったのか、もしくは 金星=VENUS(女性の意)を見失ったのかは定かではない。
そこは詠み手の想像に任せるとする。
どちらにせよ、非常に発想の着眼点が面白く、巧みな作品。
映像やイメージの復元が出来る作品。
他にも、
夜店には星の欠片も売られたる
も佳吟である。

裏窓に唄ごゑありて巴里祭
西川輝美
「森」中央支部特選。
この発想は私、大森健司の巴里祭の発想に非常に似ている。

私が兼題の巴里祭で出した作品はこれである。
裏窓を開けてひとりの巴里祭 大森健司

この輝美の作品も映像の復元がしっかりと為されている。
パリの京都にも似た細い路地の裏窓を想像させる一句である。
他にも、
パリ祭や窓のかたちに日の暮れむ
むらさきに空のかたむくパリー祭
が同時作にあったが、前作はこれらを凌ぐ物語性のある作品となっている。

水打つて黒いドレスの通り過ぐ
速水房男
「森」中央支部特選。
映像が鮮明に焼き付いてくる作品。
個人的なイメージとして、黒いドレスの女性の顔は見えない、様に思われる。
背中越しに真夏日の焼き付いた路地を遠ざかってゆく女性像を思わせる。
言葉が平明で素直でありながら、しっかりと映像の復元、リズムの良い心地よい一句。

打水を浴びて始まる恋のあり
河本かおり
「森」中央支部特選。
これも兼題の「打水」。
はじめ、この作品の目の当たりにしたとき、不思議な違和感を覚えた。
しかし、しばらくしてこれがフィクション、虚構であったとしても、ありえる話ではないか、と感じはじめた。
打水の水がかかり、そこから会話が生まれる。
「打水」で今までこの様な例句は無かったのではないだろうか。
恋の在り方として、アクシデントから起こることは少なくない。
個人的に非常に面白く気に入っている。

鋼鉄の貴婦人も居り夏の空

「森」句会支部特選。
まず、「鋼鉄の貴婦人も居り」という措辞が大変、面白い。また他に例を見ない類想のない作品。
ダイナミックな「夏の空」との対比も非常にコントラストが良い。
少しのユーモアもあり、詠み手の想像を膨らませる作品である。
他に、
この先に夕顔と呼ばれし女いて
白百合よ今宵汝が手に落ちる
もあり、秀作。
特に、
この先に夕顔と呼ばれし女いて
が俄然良い。
虚構と現実の世界観。
また映像も不思議と再現される。
良い意味で俳句らしくない良さがある。
夕顔といえば、『源氏物語』をまず思い浮かべるが、それを踏まえまくとも良い。
夕顔のはかなげさ、夢うつつ、非現実さが実に面白い。
個人的に好きな作品である。

海いろを目にとどめをり祭鱧
上田苑江
「森」中央支部に7月より、新しく入会された女性である。
同時作に、もうひとつ優れた作品がある。
祭鱧求めて店の奥の奥 苑江
「海いろを目にとどめをり」の方が格調があり、重みがある、そして普遍性を持った作品。
勿論、特選の作品である。
素晴らしい「感性、イメージの力」である。
俳句の三原則である、
①映像の復元
②リズムの良さ
③自己の投影
も見事に為されている。
季語の「祭鱧」が、作品全体を甘くしすぎず、程良い「詩の乾き」を作品にもたらしている。
また格調があるのもこの季語の恩寵。
素晴らしいの一言に尽きる。
祭鱧求めて店の奥の奥
これも個人的に大変、評価している作品。
京都人ならではである、店の情景も目に浮かぶ。
物事を観察し、切り取る着眼点が見事な作品。
個人的には「海いろを目にとどめをり」よりも、こちらの作品の方が好みである。
俳句はまず人品ありき、である。
「森」俳句会はさらに充実した句会となった。

俳句は言葉足らずでも、饒舌すぎてもいけない。
これは各企業のセミナーでも話していることであるが、99の流れる言葉より、「1の核心」を突いたひと言の方が、相手の心に残る。
話が上手ではない経営者の方々、不得手な経営者の方々もいらっしゃるが、ポイントはたったひとつでいい。
相手の心に突き刺さる言葉があればいいのである。
それは決して多く饒舌ではいけない。
あとはそのひとつの言葉を引き立てるある意味、陰や褻の言葉で良いのである。
多くを語る者は多くを失う。
それは詩歌のすべて。
又、俳句の世界でも同じである。

追記
現在は企業のセミナーやコンサルティングもいくつか行なっております。
言葉の力というものは不可欠であり、非常に重要です。
いかにして短い言葉でインパクトを残すことが出来るか、ということです。尚、川柳や短歌にはない「季語」を勉強することによって言葉の
引出しは確実に堅実に増えます。感受性も高めます。
また「森」句会とともに進めてまいります。
詳しくはまたホームページをご覧のうえ、お問い合わせください。

「森」MORI
http://morihaikunokai.jp
大森健司
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プロフィール

kenjiomori

Author:kenjiomori
俳句結社「森」主宰、大森健司のブログ★受賞多数。
お気軽に覗いて下さい。
お問い合わせは「森」ホームページ にて。

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