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2013年11月句会報

句会報の一部を紹介します。

神笑ふごとく紅葉の色づきぬ
大森健司
もののふや鍵屋の辻の初しぐれ
渡辺新次郎
小走りのナースや秋の灯がこぼれ
石田哲
眠りより醒めて脈打つ紅葉かな
菅城昌三
夕月や笛吹く町の豆腐売
西尾ゆう子
病身に澄みし光や冬の月
前田壽登
蝶凍てて淡海真っ赤に染まりけり
速水房男
だぼだぼのセーター本音言ひにけり
西川輝美
暗がりに蜜を溜めをり冬林檎
梶田紘子
冬桜雨にかすかな色持てり
秋山しづ子
紅葉して指おり歌人バスにをり
森千花
月明かり土塀に影のすすきかな
野村美穂子
はらわたのうねりの波や天高く
野村幸男
後の月かけっぱなしの喪服かな
高木憂
猪鍋や女が先に箸をとる
中原恵美
霜月の雨の眼に澄む近江かな
古田左千夫
帰宅して外の寒さと同じ部屋
余力端美

もののふや鍵屋の辻の初しぐれ
渡辺新次郎
吟行句会で真っ先に特選に採った句である。
実に「初しぐれ」の季語が効いている。
初しぐれといえば、かの有名な芭蕉の一句、
旅人と我名よばれん初しぐれ
が強烈であるが、こちらの初しぐれも素晴らしい。
藤沢周平の世界観。侘しくも力強く、凛としている。
日本人の原風景が浮かぶ極めて美しい作品。
飽きのこない一句である。
ゆっくりと鑑賞していただきたい。

小走りのナースや秋の灯がこぼれ
石田哲
これも真っ先に特選に採った一句。
秋の灯の例句というと、
秋燈や夫婦互に無き如く
高浜虚子
一つ濃く一つはあはれ秋燈
山口青邨
ひとつ見えて秋燈獄に近よらず
秋元不死男
などが、代表作である。
しかし、このナースの一句もそれに負けていない。
実である日常の中の細やかな視点。ドラマトゥルギーがある。
深夜のナースの足音が目に浮かび、耳から聴こえてくるようだ。
石田哲、代表作のひとつとなろう、一句である。

夕月や笛吹く町の豆腐売
西尾ゆう子
同時作に、
七色の光揺らして千草散る
台風一過こころの奥の部屋にゐる
もあり、どれも秀作である。
しかし、豆腐売の一句が格調高く、京都の風土を表している。
特に京都の洛中、洛北の情景が目に浮かぶ。
「夕月や」と上五で切っているのが成功の秘密とも言える。
叙情もあり、素直な伸びやかな作品が西尾ゆう子には多い。
まだ1年に満たないが詩才に溢れていることは言うまでもない。
京都大学院生であり、来年度より臨床心理士になる。頑張っていただきたい。

11月は吟行で、京都日向神社に行くこととなった。
もうまさにピークであり、明日ではもう駄目であろうという状況であった。
散る紅葉は正に、光る雪のようで、幻想的であった。神秘的であった。
以下の3句を創作した。
血の色の紅葉や神の天降る(あもる)なり
神笑ふごとく紅葉の色づきぬ
紅葉燃ゆこころに落ちし水のいろ
大森健司

皆の成長と今年の最後の句会のひとつひとつを大切にしてゆきたい。
守るべき伝統は守り、打ち破ってゆく伝統は打ち破ってゆくべきだと思っている。


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