2014年8月句会報

句会報の一部を紹介します。

繭掻や大きな雲の流れをり
大森健司
白露かな少女片手に手鏡を
夏目華絵子
初秋や詩人の眼洗ひをり
菅城昌三
生き残るものに陽の射す素秋かな
西川輝美
良夜かな五臓六腑の動き出す
速水房男
後ろから落ちてゆきけり処暑の海
西尾ゆう子
青空に影絵のごとし鵙の贄(もずのにえ)
余力端美
蛇穴に遠くまぶしい空の在り
高木憂
輝ける星と星との闇深き
野村幸男
貴船川涼身に入みて夏ゆきぬ
野村美穂子
処方待つ色なき風の過ぎゆけり
古田左千夫
棚田より晩夏のひかりこぼれ落つ
中原恵美
ペタルこぎ都会(まち)に出てゆくせがれかな
荒木克彦

今回は句会がふたつ休会となった為、作品数の少ないことご了承ください。


初秋や詩人の眼洗ひをり
菅城昌三

他にも、
洗ひ髪なるまま開く奇譚集
蠅叩く夜をゴミ箱に捨てにけり
いなびかり背骨の芯を抜かれけり

があり、すべて良い。
あえて言えば、「洗ひ髪」の句についてだが、
洗ひ髪と奇譚集の組み合わせは大変面白いが、
なるまま開く、というのは少し創作を追求していないように思われる。
しかし、この作者の良いところは類想がない所以にある。
昌三の持つ文学性そのもので作品を生み出しているのである。
詩人が眼を洗う、夜をゴミ箱に捨てる、背骨の芯を抜かれる。これらは全て感性である。
「洗い髪」の一句は添削すると素晴らしいものになる。
洗ひ髪の代表句としては、
せつせつと眼まで濡らして髪洗ふ
野沢節子
髪洗ひ生き得たる身がしづくする
橋本多佳子
などかあるが、昌三の中七を推敲すれば、これらを凌ぐ現代的な作品となる。
彼には才能に溺れず、季語を徹底的に追求してもらいたい。
昌三には代表句として、
香水を夜に落とせし堕落論
がある。

後ろから落ちてゆきけり処暑の海
西尾ゆう子

処暑とは、二十四節気の一つで、八月二十三日、四日にあたる。
「節より十六日めを処暑といふは、暑気すでに潜まり処るをもって、処暑と名づく『改正月令博物筅』」とある。
後ろから落ちてゆきけり、という措辞に大変感銘した。
青春と堕落の調合に、である。
後ろから落ちてゆきけり。何とも気持ちが良いではないか。
他にも佳吟として、
送り火や時やはらかく燃やしけり
りるられろ雨の奥より虫の鳴く
古き家の石榴真っ赤に割れにけり
待つことの酸欠夏は過ぎにけり

があり、良い。
作者は京都大学大学院臨床心理士、32歳である。日常から詩才を切り取ることに非常に秀れている。

青空に影絵のごとし鵙の贄
余力端美

この作者は急成長を成し遂げている。映像の復元が見事になされている。驚いた。
また、他にも、
新しき家紋に親しみ桔梗買う
中元の桃の香りや部屋華ぐ

句が喜びに溢れている。
それもそのはず。再来月に結婚を控えている。
その喜びが詠み手にまで伝わってくる。まだ26歳。今後に大きく期待したい。


俳句をつくって想うのは伝統・歴史である縦の意識。
そして横の座の意識である。
これらの拡がりが大きければ大きいほど立体としての俳句のスケールは大きい。
ちまちましたつまらない技巧で努力してもしようがない。
俳句本来の持っていたフィクション、眼の前の事実だけにとらわれない豊富な連想の世界を取り戻したいと考える。

大森健司
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Author:kenjiomori
俳句結社「森」主宰、大森健司のブログ★受賞多数。
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