2014年9月句会報

句会報の一部を紹介します。


全身が脈を打つなり曼珠沙華

大森健司

泣きながら布団にもどる良夜かな

夏目華絵子

秋祭り暮れて神話となりにけり

菅城昌三

欲望の皿からこぼれ黒葡萄

西川輝美

秋の昼母の絣を染めにけり

西尾ゆう子

星流る手の温もりの離れをり

速水房男

かたちなきものを畏れし銀河かな

高木憂

病める手を妻と重ねて寒の酒


野村幸男

鵜ののどに捕らえし魚や我も又

野村美穂子


砕かれし言葉夜長の星となる

中原恵美

鰯雲こげし夕べよ海に出づ

古田左千夫

石ただみ夕暮れ時の散歩道

荒木克彦


小鳥来る色とりどりの化粧瓶

大森理恵


今月は句会がふたつ休会の為、作品がすくないことをご了承ください。



小鳥来る色とりどりの化粧瓶

大森理恵


大森理恵は、僕の母であり、師でもある。

今月より「森」に掲載する。

彼女は、作品において二句一章が非常に巧みである。

二句一章とは、もどきの精神であり、全く一見関連のない事柄をつかずはなれずの距離でむすびつける作業である。

この句においても、「小鳥来る」と「化粧瓶」には何の関連性もない。

しかし、そこに映像の復元、色彩感覚の豊かさが見事に表現されている。

それは「色とりどりの」という措辞によって、色鳥を連想させることにもある。

それを敢えて、小鳥来るとしたのは流石である。大森理恵の色彩感覚は見事である。

ちなみに30年ほど前の結社全国大会1位を受賞した、富山水橋での吟行句。

漢薬を小瓶につめて小鳥来る 理恵

というものがある。

よく学んで頂きたい例句。




秋の昼母の絣を染めにけり

西尾ゆう子


非常に素朴。さりげない。

そこが大切なのである。

普遍性のある句というのは、素朴でさりげないものである。

「秋の昼」が全く一句に溶け込んでいて、出しゃばっていない。

また、他に、

人間の味とは如何に熟れ石榴

新涼の赤子吸いつく乳房かな

十六夜のバス見送りて影ふたつ


があり、全て佳吟。

日常生活の中で自分なりの発見をすることに、非常に巧みである。

このまま維持し続けて頂きたい。

又、彼女の好きな句をひとつ挙げる。

真直ぐ往けと白痴が指しぬ秋の道

中村草田男




俳句とは、最も短い詩。

その17文字の中に瞬間を切り取る作業でもある。

そこには新たなる発見と感動がなければ、意味がない。

感動というものは人それぞれに異なる。

他人に理解してもらえない感動もある。

しかし、それを、貫いて詠んで頂きたい。

技術や技巧も大切だが、それは感動や発見に準じるものである。

最優先ではない。

いまの俳壇が停滞しているのは、それが原因だからと思われる。

技術や技巧に走りすぎている。




萩原朔太郎の「月に吠える」に、

すべての良い抒情詩には、理屈や言葉で説明出来ない一種の美感が伴ふ。

これを詩のにほひといふ。

詩の表現は素朴なれ、詩のにほひは芳醇でありたひ。




正にその通りである。




大森健司
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