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金子敦 「乗船券」

10月吉日、金子敦氏から、第4句集「乗車券」が贈られてきた。





ようやく、10日程経て開くことができた。

失礼ながら、金子敦氏ははじめ少年のような純粋さと弱々しさを感じていた。
しかし、対話して向き合っていくうちに、
芯が強く、真っ直ぐで頭が良く素直な力強い人物であることが分かった。
天へとまっすぐ駆け上ってゆくような。

この句集の中にもあるが、

あつちゃんと呼ばれてゐたる月見かな

とあるが、皆のあだ名は、あっちゃん、である。

この句集は、まずはじめの印象として、母、大森理恵の初期作品に非常に似ていると感じた。
非常に伸びやかで瑞々しさがある。

まず、秀句から挙げる。

満月の向かう側より呼ばれけり

冬薔薇の花心より曲流れだす

地球儀へ鶯餅の粉が飛ぶ

油照ダリの時計の歪みだす


騙し絵の中へと続く雪の道

深秋の紅茶にジャムの沈みゆく

蜂蜜の白濁したる神の留守

まつしろの石鹸おろす良夜かな

風花や漢方薬の琥珀色


ゴッホの絵観て炎昼の街へ出づ

寒波くるアルミホイルの切り口に

なんでもないなんでもないと蜜柑むく


次に、特選句を挙げる。

カステラの黄の弾力に春立ちぬ

月光がピアノの蓋を開けたがる

月の舟の乗車券を渡さるる

消えかけし虹へペンギン歩み寄る


中でも、三重丸がある。

夕虹やまだ濡れてゐる母の墓

とほき日のさらにとほくに冬夕焼


「夕虹」の季語の効き方、「まだ濡れてゐる母の墓」の措辞、
正に見事である。
また「夕虹」の季語が非常に繊細で抒情がある。
これは人柄であろう、と思われる。
平明で、映像の復元があり、何度も飽きのこない作品。

これは素晴らしい作品集。

句集にはふた種類ある、良い句でも何度も読み返したくなる句集とそうでない句集。
この句集は何度も読み返したくなる誠に愛しい句集である。
ほとんどの句集は処女句集が一番良いと言われている。
しかし、この句集は第4句集。

金子敦氏の人柄が句柄に如実に表れている。

是非とも一読して頂きたい。

更に進化するであろう、俳人、金子敦氏とともに未来の俳句を歩んでゆきたい。

秋風や腰のあたりに父の墓
大森健司

夕虹やまだ濡れてゐる母の墓
金子敦

「森」主宰 大森健司
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